なぜこんな名も知れないようなライブに行ったのか? このライブにはエーテルの歌姫が出たからだ。 彼女の名前はSalyu。 映画「リリイ・シュシュのすべて」で、彼女の曲は作品中に使われ、 この映画になくてはならないものとなった。 自分も、その曲を初めて聞いたときは衝撃的だった。 映画が終わっても、頭に残るあの歌声、メロディ、歌詞。 どうしても生の歌声が聞きたくて、平日にもかかわらず有休をとって急遽馳せ参じた わけである。
会場の吉祥寺STAR PINE'S CAFEは、吉祥寺駅から歩いて5分もかからない。 なかなかアクセスのいい場所である。 ただ、箱的には小さい。今回は椅子を置いていたが、立ち見も含めて150人弱と いったところか。 入り口からは地下1階に降りて見る形になるが、2階(実質は地上1階)からも 見ることができる。 ただ、2階からは手すり越しになるので、連れと話をしたり、食事をしながら アーティストを見るのはツライかも。できれば1階で見たほうがベター。
この「詩百の木」(うたもものき)は、定期的に開いているライブのようで、 実に今回で66回を数えるとのこと。 今回のメンバーはSalyuの他、歌姫楽団、川久保秀一、原田博行、奥華子。 奥華子はぼんやりとは知っていたが、後の面子は全然知りません(笑) Salyuはライブのトリなので、それまでビールを飲みつつライブを鑑賞。 歌姫楽団は、林檎をこぢんまりとさせたようなバンド。ボーカルの娘が元気いい。 川久保&原田はアコギコンビ。「うたいびとはね」系統です(笑) 奥華子は自らピアノを弾き、歌うという「一人kiroro」な感じだけど、なかなかイケるかも。
・・・そして、最後に待ち焦がれたSalyuの登場。 青いワンピースを着て現れた彼女。初めて顔を見たけど、結構可愛い。 この人があんな声を出すのか?否応無しに期待は高まる。 今日のメンバーはベース、ギター、ドラム、キーボード。 あれ、ドラムの椎野恭一さんって・・・AJICOの椎野さんじゃん!なんか嬉しい。 そして1曲目は「アラベスク」。 キーボードから流れるオルガンの音色に合わせ、彼女の声が響く。 スゴイ。映画で聞いたあの声、あの曲のまんまだ。 ただ、途中からドラムを入れたアレンジだったのは賛否分かれるところ。 2曲目は「光の束」。スローなナンバーだけど、やっぱりそのメロディに引き込まれる。 未発表曲だそうですが、アルバム「呼吸」に入ってても何ら遜色ない、いい曲だ。 3曲目は「Tomorrow Never Knows」。ミスチルの曲じゃありません(笑) THE BEATLESのカヴァーです。アレンジもなかなかの出来。 そして「愛の実験」、「エロティック」と続く。 この辺は、もう映画を見てファンになった人には、たまらない内容です。 6曲目「飛べない翼」は秀逸。 映画で見た田園風景や、夕暮れにそびえ立つ鉄塔が目に浮かぶ。 最後の曲は「グライド」。最初はピアノだけでSalyuが歌うという風にアレンジを変えてきた。 彼女は時々空を見上げる。ここは地下1階なのに、何を見ているのか? そして歌う。「I wanna be・・・、I wanna be・・・」 (風になりたい、空になりたい)そうだ、グライドの歌詞じゃないか。 ああ、思わず自分も涙腺緩んだっぽい。 そして、素晴らしい時間はあっというまに過ぎ、ライブは終了した。
正直、今回のライブを「リリイ」としての彼女を見に来た、という部分が心の中に少しあって、見るべきか迷ってた。 それはSalyuとしての彼女に失礼だ、とも思っていたからだ。 しかし、ライブを見て「そんなことは意味ないのだ」と理解した。 今宵、吉祥寺の小さなライブ会場に、間違いなく歌姫はいた、それでいいのだと。 彼女が「リリイ」なのか「Salyu」であるかなどは、不毛な論議だ。 これから彼女の発する言葉、メロディの全てが新たな「歌姫Salyu」を作っていくことだろう。
次回は11月13日(水)、同所にて出演予定とのこと。 彼女の声が聞きたくなった方は、ぜひ行ってみてください。
Salyu@STAR PINE'S CAFE 2002.9.18 SET LIST 1.アラベスク 2.光の束 3.Tomorrow Never Knows 4.愛の実験 5.エロティック 6.飛べない翼 7.グライド
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