「ご起立ジャポン」@(7/08)
<発育ステータスVSハンサム兄弟>
群馬県の女王さんによるライブレポート
7月8日、新宿。
心配されていた台風も去り、新宿は、此の先のイベントの為に用意されたかの様な晴天となった。
あの、椎名林檎らをメンバーとしたバンド「発育ステータス」とメルコアなるジャンルを確立している4人組「ハンサム兄弟」。
本日、7月8日は此の2組のバンドの対バンイベント、「御起立ジャポン」の開催日である。
歌舞伎町にある新宿リキッドルームで開催される此のイベントは、表上、出演メンバーが明らかにされていないシークレットイベントであり、
此の大変入手困難なチケットをGETした人々だけが、今日のステージを見る事が出来るのだ。
会場時間が迫ると店の前には長蛇の列が出来た。
並んでいると、一人の男性が「チケット譲って下さい。」と書かれたボードを持って立っていたが、
其の男性を嘲笑うかの様に、チケットをGETした客達は、微笑ましい笑顔で店の中へと消えていった。
階段で並んでいる途中、壁に書かれた無数の落書きに気づいた。
其れは今迄、リキッドルームの舞台に立ったアーティスト達の名前である。
おそらくFANが書いたのであろう。
其処にはミッシエルガン・エレファントやくるり等、今、最も活躍しているアーティスト達の名前が刻み込まれていた。
其れは此処の舞台に立ち、認められた者にしか与えられない勝利の文字の様にも見える。
今日の2組のバンドも、此の勝利の壁へと其の名前が刻み込まれるのであろうか?
階段では汗も吹き出す暑さから気温の高さだけでなく、観客らの緊張感等も伝わってきた。
ようやく7Fに着き、ドリンク代200円を払って会場へ。
グッズコーナーやドリンクを注文する為のカウンターは、待ちきれない大勢の客でにぎわっていた。
グッズコーナーで、リーフレットと云うパンフレットの様な物を購入し、ドリンクどころでは無かった私はすぐさま会場へと足を踏み入れる。
「早く見たい」只、其の押さえ切れない感情しか、今の私には無かったからだ。
会場は少し暗く、照明が奇麗に見える。客席は盛り上がり、スタッフは今から始まる最高のステージの為に、忙しそうに準備をしている。
辺りでは煙草の臭いだけが漂い、それから次々と外で待っていた客が、中へと入ってくる。
客席は既に入り口付近迄、満員になってしまった様だ。
しばらくすると、ステージで音合わせが始まった。
客席は、まだかまだかと更に盛り上がる。
照明が暗くなり、先攻、ハンサム兄弟のステージが始まった。
真っ暗闇でVoが突然、叫び出したかと思えば、ステージにスポットライトが当たり、いきなり「ギブス」をギターをかき鳴らしながら歌い始めた。
客席には笑いが絶えない。
そんな感じで始まった彼らのステージ。
初めて見る其のステージは、今迄観じた事の無い程の衝撃を受けた。
興奮と共に身体中は震え、鳥肌は立ち、あまりの感動に私の目からは大粒の滴が溢れ出していた。
掌に落ちた其の滴が、光に当たって宝石の様に見えた。
初めて体験した此の衝撃は、言葉で言い表せないと感じる程素晴らしいステージだったと思う。
全ての曲が終わり、彼らは無言で去って行く。
「ありがとう。」
私は其の言葉を心の中で、何度も繰り返した。
ハンサム兄弟のステージが終わり、客席に照明がつく。
いよいよ待ちに待った発育ステータスの登場なのだ。
周りの客のTシャツから流れ行く汗から、先程のステージがどれだけ良かったのかが伝わってくる。
2、30分待つと、ステージで音合わせが始まった。
先程迄、煙草を吸い、座りながらくつろいでいた客も、緊張感が高まったのか一斉に立ち上がった。
暗闇のステージで只響くギターの音。
発育のギター担当、チャコちゃんこと、田淵ひさ子嬢が音合わせを始めたのだ。
女とは思えない程のギターの上手さには、聴いている側も程よく心地良い気分にさせてくれる。
音合わせをしているステージに注目していると、チャコちゃんが何故かくるくると1回転した(笑)何故だ!何故なんだっ!(笑)
しばらくすると、ドラムの吉村さんも音合わせに出てきた様だ。
何分かして音合わせも終わり、客席の照明が暗くなった。
突然、何かを求める様に叫び出す観客達。
ステージのマイクスタンドに、1人の女性の影が映し出されると、其の歓声は更に大きいものとなった。
ステージにスポットライトが当たり、椎名林檎の顔が衝撃と共に顔に焼き付けられる。
そして発育ステータスのステージが始まった。
白いワンピースを着た彼女がベースをかき鳴らしながら歌い始めると、
客達は今迄押さえ切れなかった感情を彼女に捧げるかの様に盛り上がり、そして飢えた動物の様に叫び出す。
其のか細い身体から懸命に振り絞る彼女の声に母親を求める赤ん坊のように、全てを求めている様にも見える。
彼女も其れに応える様に歌い続ける。
其の歌声を通して、私達に何かを訴えているのだろうか?
飛びはねながら弾きまくる田淵ひさ子のギター、力強い吉村由加のドラム、深く響く鳥井泰伸と村田純子のベース、
そして椎名林檎の歌声と、全ての音が新鮮に耳へと入り、なんだか病気になった感覚さえ覚える。
彼女達のサウンドは私達に安らかな快感や、刺激を与えてくれる様な気がした。
私は其の瞬間、歓声を上げ続ける周りの観客とは違い、只彼女が此処に存在すると云う事実だけを、呆然と見つめる事しか出来なかった。
彼女が此処から消えてしまうのがとても恐かった・・・・・。
途中、MC等も入り、全11曲を華麗に歌い上げ、歓声の中、消えて行く彼女達。
今回の発育ステータスのステージを見て思った事は、椎名林檎が「椎名林檎」と云う人物に見えなかった事だ。
いや、感じる事さえ出来なかったのである。
其処に居たのは、只の「椎名さん」と云う、ごく普通の女の子だった。
彼女も厭な事を云われれば傷つくだろうし、悩む事だってあるだろう。
決して強い人間でもなければ、私達と何も変わらないと思う。
しかし、マスコミは彼女の事を「特殊な人間」扱いし、看護婦姿の彼女を見れば「コスプレ」だとか云う。
そんなマスコミが作り上げたイメージにも負けず、一生懸命歌い続けた今日の彼女を、彼らが見たとしたら、どう受け取るのであろうか?
今日何よりも此のステージを、彼女を誤解したイメージでとらえているマスコミや、世間の人々に見て欲しいと私は思った。
彼女も1人の人間であるのだから・・・。
「私は私であり、あなたはあなた以外の何者でもないし、 あなたがあなた以外の何者である必要なんかはまったくない」
(御起立に際して 宣言文 イン・ジャポンより)
御起立ジャポン7月8日新宿リキッドルーム/曲順
1、発芽
2、良い苗悪い萌
3、害虫駆除
<MC&メンバー紹介>
4、生え抜き
5、膨らんできちゃった
6、ハイハイ
<MC>
7、高い高い
8、咲かせてみて
9、今夜どう?
10、雌花故雄花
<MC>
11、光合成
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